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柴田是真のあれこれ(本題は最後に)
僕がいまのところ一番好きになった是真の作品
NY・ジャパン・ソサイティーの柴田是真展で。名前がはっきり思い出せないが、宝尽蒔絵料紙箱だったかな・・・。
このモチーフは七福神のアイテムで、是真はこのアイテムをいろいろ組み合わせて使っている。たいてい海外でのタイトルは「attributes of the Seven Gods of Good Fortune 」になっていて、邦訳は「宝尽蒔絵」になっていた。
このモチーフは布袋(繁栄の神)によって運ばれる金貨、願望の宝石、蔵の鍵、そして扇の4つ。側面に願望の宝石と知恵の巻物だったかな。
ハリーリ・コレクションから (C)Khalili Collection
BOOK 明治の宝 柴田是真 by Tadaomi, Goke
過去記事「柴田是真」でも紹介しているものと同じ。
著者は日本人、漢字が・・・。amazonからも買える。
Oxbow Books
正式な名前がわかりませんが、是真の鴉を思い出した。
宝尽蒔絵料紙、硯箱
ビクトリア美術館(Art Gallery of Greater Victoria)
印籠と根付
(C)Art Gallery of Greater Victoria, British Columbia
The Cohen collection リチャード・コーエンのコレクション
鼠の印籠 後ろにも1匹
この人の印籠と根付のコレクションは有名
メアリー・アンド・ジャクソン・バーク財団
(バーク・コレクション展懐かしいですね。)
キャサリン&トーマス・エドソン夫妻コレクション
沢瀉と片喰図 印籠 1860年
NY・ジャパン・ソサイティーで。
これもNY・ジャパン・ソサエティーでの柴田是真展
Set of dining vessels in Kasuga Shrine
「春日大社蒔絵食器」1883年
柴田是真の漆×絵では「松鶴に鵲文正月揃」
この春日大社の盃が二番目に気に入っている。
盆には昆虫が描かれている。蜻蛉とか蝶とか。
縁起のよいモチーフの漆の重箱
「宝尽蒔絵料紙箱」だったかな
ca. 1860–1870
BOOK 柴田是真 キャサリン&トーマス・エドソン夫妻コレクション
流水蝙蝠角盆 バットマン?
(C)www.db-ichiba.jp
(C)柴田是真の漆×絵 チラシより
さてこの「柳に水車文重箱」について、4つの重箱の側面についての説明が三井記念美術館のHPにあった。
このコラムから拝借してきた二つの側面についてだが、川をはさむ二つの岸辺を創造しなければならないようだ。
三井記念美術館からの引用で要約
まずは画像ない側面は、櫛箆使いによる青海波塗り(紋漆を櫛箆で波模様をつくる)が川の流れとなっており、この波模様は画像にあるセンターゾーン。
そして画像の側面にうつるが、手前の岸辺に水車は四分一塗(銅と銀の合金)で描かれている。そこには若芽の柳に榛の木で春を表現。向こう岸には葛、女郎花、桔梗、薄で秋を表現。
また背景は青銅塗り(黒漆と炭粉、黄と青の顔料)で、変塗りを駆使して金蒔絵や漆絵を組み合わせた是真の漆工を象徴している。とあった。
三井記念館
まただまし漆(だまし漆は記事 柴田是真 Shibata Zeshinから)とよばれているもので見れるのは宣伝にもでていた「花瓶梅図漆絵」とか。
本題 Shibata Zeshin Art Nouveau&Japonism
(C)flickr by Snuva
柴田是真 烏鷺蒔絵菓子器 東京国立美術館
烏図屏風 作者不詳 シアトル美術館蔵 画像は大きくなります。
年代・作者不詳 フランス 漆のパネル
柴田是真(1807-1891)の晩年は、ちょうどヨーロッパでアール・ヌーヴォーが誕生した。1873年にはウィーン万国博覧会に「富士田子浦蒔絵額面」を出品して進歩賞牌を受賞。
アール・ヌーヴォーはウィーンではユーゲントシュティル(Jugendstil)と呼ばれ、1892年にはフランツ・フォン・シュトゥックらによるミュンヘン分離派が結成されて以来、アンリ・ヴァン・デ・ヴェルデ、ヨゼフ・マリア・オルブリヒ 、オットー・ワーグナーが活躍した。
クリムト(1862-1918)、エゴン・シーレ(1890-1918)も是真の晩年と重なる。クリムトのジャポニズムを感じさせるものは「愛」かもしれない。
柴田是真 金箔と漆を使用した漆絵画帳より「芍薬」
クリムトはイタリアのモザイク様式と日本の黄金と紋様を作品に残しているが、そう考えると僕の過去記事「ベートーベン・フリーズ」にもジャポニズムの足跡が残っている気がする。
ジャポニズムは1856年頃からフランスで広まっていく。
エミール・ゾラ、ボードレール、ロートレック、ホイッスラー、マネやモネ、アンリ=ファンタン・ラトゥール、ゴッホなど名を上げてはいられないくらいだ。
パリの美術商、サミュエル・ビングが1895年に店名をarts shop 'L' Art Nouveau Bing' (アール・ヌーヴォー ビング)と呼んだからだ。
'L' Art Nouveau Bing' (アール・ヌーヴォー ビング)
L'Art Nouveau - La Maison Bing
1900年にはパリ万博、エクトール・ギマール、ルネ・ラリック、エドガー・ウィリアム・ブラント、アルフォンス・ミュシャ、ウジェーヌ・グラッセらや、ナンシーのエミール・ガレ、ルイ・マジョレル、そしてギュスターヴ・セリュリエ=ボヴィ、ヴィクトール・オルタの建築物、そしてホフマン。
そんな時代をつくったビングは光琳ほか柴田是真も好んだ。漆、日本画、浮世絵は、ここから影響を及ぼしたと言ってもいいと思う。
'L' Art Nouveau Bing' (アール・ヌーヴォー ビング)の品。
真珠母貝を漆器にはめ込むか貼り付けした櫛は、平安時代の蒔絵にも使われている。19世紀江戸時代のもの。
是真が亡くなって、日本から一人の漆職人がフランスに渡った。1900年のパリ万博のために漆職人菅原が渡仏していることになっているが、日本では1904年となっているものもある。いずれにせよ、フランスはベル・エポック(Belle Époque 良き時代)とよばれるようになった。
ふ〜の記事から サン・ローランとベルジュの宝物 より
ジャン・デュナン (Jean Dunand:1877-1942) の「Art Deco brass-and-lacquer vase」です。アールデコ期のインテリア・デザイナーで、パリ万博に出展した日本の浄法寺の漆職人菅原清三に師事。
この菅原清三ではなく菅原精造という漆職人は、日本の寺で仕事をしていたようだ。彼はパリ万博に出展したとあるが、彼は日本から送られてきた漆製品の修理の為に渡仏したらしい。
アイリーン・グレイは菅原に師事したという。そしてデュナンに紹介したのも彼女。
アイリーンはロンドンの漆器修理職人チャールズ氏から学んだあと、1907年パリに戻って菅原と出会った。
アイリーンの漆のパネルや漆絵をみたけれど、デュナンのほうが僕の好みだ。
この漆パネルは、是真のように変塗りをしてる?エッグシェルってegg shell型の金属をさすのか、石器時代のエッグシェル・ポタリーとよばれた土器に多い幾何学文様や籠細工の文様をさすのかわからないが、1925年のデュナンの作品を選んでみた。
菅原は1937年にパリ郊外で亡くなっているらしいが、1940年ともされている。
この是真と菅原の間に、フランスはベル・エポックの良き時代をむかえ、それから第2次世界大戦がはじまる。
柴田是真 タイトル不明 アール・ヌーヴォーのような波か?
北斎のようにヨーロッパの画家やその画家の作品に登場する是真ではないが、工芸品という視点で捉えるなら、漆器に屏風に、装飾品という商業デザイナーとしての洗練さがある。
彼の描く作品はインテリアや身の回りの装飾品などの日用の美のほかに、異国の芸術家たちの詩や音楽に影響するような気がする。
ゴッホらが北斎をはじめとする浮世絵を蒐集するなら、是真は美術商や工芸家の目に触れたのではないだろうか。
Le Japon Artistique no 1 may 1888
1888年5月から1891年4月までに計36巻が発行された「Le Japon Artistique(日本の芸術)」は、ほかならぬビングによる編集。論文と多数の図版が掲載された。
ちなみに10巻くらいで翻訳されているものがある。
掲載されているもので、作者やタイトルのわからない作品も多い。まだ全巻を見せてもらっていないが、残念ながら是真が見当たらない。
だが、1873年に是真が万博で「蒔絵」が評価されたことが、1900年のパリ万博で日本の漆や蒔絵が注目されるに至るのではないか。学生だった菅原が渡仏するに及ぶのも、是真のウィーン万博の作品効果だと考える。
BOOK L'Art Nouveau ISBN: 3763024417
この「アール・ヌーヴォー」という本には、美術商ビングをはじめ、その時代を象徴する芸術家たちが紹介されている。ここには柴田是真もあげられている。
画像は大きくなります。これは1873年ウィーン万博の日本館のイラスト。正面右上の作品が気になる。是真はどのくらい出品していたんだろう。
これは1873年ウィーン万博の写真。あのエリザベート皇后の時代だ。こうした時代に是真の作品が評価されたわけだ。
僕は専門家ではないので勝手なことばかり書いています。つまり鑑賞側の感想です。そうしてこれまでにいくつか記事をかいていますが、あくまでも僕個人の価値観です。さて過去記事はこちら。
柴田是真 Shibata Zeshin
柴田是真 作品 オークションにだされているもの、摺り物絵など
柴田是真 漆絵画帳(絵本漆絵)、是真髤画帖、柴田是真翁漆絵集
是真のちょっと面白いものを発見した。
「春秋屏風」? クリスティーズのオークションにて
BOOK「Autumn Grasses」 by Margaret Gibson 過去記事
メトロポリタン美術館アジアンアート展で 柴田是真 漆絵画帳10図
蝶・芍薬・雅楽・茶器など12点ほどあったかと・・・思ったが・・・
そして歌舞伎役者 摺り物絵
大天狗に扮した七代目 市川團十郎 (1791–1859)と牛若丸に扮した九代目 市川團十郎 (1838–1903)の歌舞伎の芝居本?九代目の初舞台か。
是真髤画帖より4図
髤筆で描いたということでだろうか?色紙形の漆絵画帳。
虎図 今年は前向きに・・・
桜花図
月に白鷺だったかと・・・
月に隠元豆?
柴田是真翁漆絵集より6図
漆と顔料、もしくは墨と顔料で描かれている作品集。
下記の作品は漆が使われていないと思う。
桜花図
うるしの樹木図
沼に水草図?
鯉に水草図
柳に白鷺図
荷車に七夕図
漆絵画帳 「うるし絵」より全16図 タイトルどおりの漆の画帳
漆絵画帳「絵本漆絵」より 漆とカラーインク(顔料系)を使用
柴田是真 漆絵作品
草花図 ボストン美術館蔵
鸚鵡図 ボストン美術館蔵
宝員尽図漆絵 キャサリン&トーマス・エドソン夫妻コレクション
メトロポリタンでみた是真の漆絵画帳は、漆に顔料を混ぜた色漆だけではなく、たぶん蒔絵画があった。あとで漆絵のことを教えてもらったので、そのときはそんなことを知らないで鑑賞してた。
次の記事でこの作品を取り上げるが、Flickrにはすっごくうまく撮った写真があった。(金箔がわかりますよね。)
(C) flickr by peterjr1961
柴田是真漆絵画帳 メトロポリタン美術館
最近では教室もあるんだけど、ものすごく高い。筆1本でも。習字の筆って安いのも多いけれど、それと違う。で、個人の体質も関係あるらしく、見学だけしてきた。漆にも使う刷毛は髤筆と別名があると聞いた。
単色のものと彩漆絵、漆を塗ってから色を重ねるものなどいくつも種類があるらしい。
記事 柴田是真 作品 オークションにだされているもの、摺り物絵など
記事 柴田是真 漆絵画帳(絵本漆絵)、是真髤画帖、柴田是真翁漆絵集
円山四条派直系の絵師であり、蒔絵師でもある柴田是真は、幕末から明治前半に活躍した19世紀日本美術を代表する一人。
ただし、その作品の大半が焼失あるいは海外に流出してしまったため、なかなか目にすることが少ない。
横溝 広子, 薩摩 雅登編著の柴田是真 下絵・写生集から東京芸術大学大学美術館が所蔵する貴重な天井画下絵や写生帖の作品をみることができる。
明治宮殿の天井画「明治宮殿千種之間天井綴織」は、宮殿消失とともに消え、この下絵しか残っていない。
この二曲一双の作品は「Autumn Grasses in Moonlight」といい、メトロポリタン美術館蔵。
柴田是真の作品は、山種美術館に所蔵されている。板橋区立美術館には、果蔬図 / 蜘蛛の巣図 / 猫鼠を覗う図 のはかに、貝図屏風、鴨図、十二ヶ月短冊帖、大花瓶色絵漆絵 が収蔵品リストにある。
こちらは明治にはいってからの作品で「室内遊楽図屏風」だ。クラーク財団所有のもの。
Masterpieces by Shibata Zeshin: Treasures of Imperial Japan (The Nasser D. Khalili Collection of Japanese Art)
Joe Earle, Goke Tadaomi
The Khalili collection
バーク・コレクション
柴田是真 茨木図屏風
明治時代 1882年政策
Art com/Kimbell Art Museum
The Cleveland Museum/art net
Museum of Fine Arts, Boston
Fine Arts Museums of San Francisco
art-antiques/globalgallery.com
Gallery-Inkstone/The Cleveland Museum /The Cleveland Museum of Art/Shibata Zeshin / White Mice/Ukiyo-eWoodblockPrints.com
Etsuko & Joe Price Collection
「Gallery Systems」
エツコ・ジョウ プライスコレクション Zeshin
プライスコレクション「若冲と江戸絵画」展
東京国立博物館・平成館(上野公園)2006年 7月4日〜8月27日
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こうしたように、作品が掛け軸の外(余白)に遊び心で描く画家は日本、西洋と多いが、子鬼が転げ落ちるように逃げ出している様は、まるで、こちらの世界に逃げてきているようだ。この作品はwikiからの引用で、「閻魔大王と子鬼」ではないかと思う。全体像はクリックで。
画像は大きくなります。
是真の作品で一番好きな漆の「重箱」。
Thomas Edison Collectionより
この人も江戸、明治の画家だけではなくデザイナーと呼んでもいいのではないか。
「柳に水車文重箱」エドソンコレクション
賀茂祭
是真の蒔絵
柴田是真の漆×絵 でだまし漆と漆芸作品を名づけたが、漆を塗る技術で素材を見間違えたり、あえて割れ目を彫り金属にみえるよう漆で鎹を描いてみせたり、木枠に見えるよう漆で仕上げたりと、人を錯覚させる作品が多い。そういえば、海外の作品でもわざと古木調に仕上げて虫食いのあとをつけるなどのものもあった。
鶏図